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インタビュー

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速記士 山内雅弘

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スピードと正確さが求められる速記士の仕事

速記士という仕事について

速記士の山内雅弘さん

――自己紹介をお願いします。

山内雅弘と申します。性別は男性です。やっていたのは、基本的には速記の仕事です。

私の場合、最初の1年間は民間の速記事務所に勤めておりました。そこは極めて多忙で、月に2、3回は徹夜がある事務所だったんです。

それで会社の先輩から「あなたはこんな所にいたら早死にするわよ」と言われまして、さらに技術的にも国会の速記士の方がレベルが高いものですからそちらに入ろうと思いまして、民間の速記事務所は1年で退職しました。

参議院は速記士養成所がありまして養成所からの人間しか採用していなかったんですが、衆議院は養成所以外からも採用試験の受験資格がありましたので試験を受けて、なんとか合格できたものですから衆議院に入りました。

勤め上げるつもりでいたんですけど、衆議院の速記士というのは身分的には特別職国家公務員になるわけです。

省の一般的な公務員は、行政職、裁判所などは司法職で、国会の場合は立法府ですがなぜか立法公務員と言わずに、特別公務員になります。

いずれにせよ公務員なのには変わりなくて、公務員の世界というのは若いうちは昇進していくわけです。

衆議院の速記士の場合は養成所が2年半で、私は外部から入りましたので1年間のロスがありまして、1978年の10月に23歳で採用されたんです。

普通、養成所から来た人間は高校卒業後に2年半の養成所生活があってそれから入りますので21歳ぐらいで入局するので、そういう意味では若干遅かったんです。

けど、民間の会社と違いまして年齢差別というものが無く、まして速記士という技術職なものですから、最初は速記士補という肩書で入りました。

1年後に速記士試験、さらにその3年後に主任速記士試験というものがありまして、それに合格しないと昇格していかないわけなんです。

ただ主任速記士試験が終わりますと、あとは同期の中では序列によってところてん式に上がっていって、ある年代になりますと今度は言葉がよくないですけど出世競争というか、要は管理職になる人とならない人が出てくるんです。

私のころは、ちょうど終戦直後に入った団塊の世代の方が多くて、一期で20人くらいの方がいらっしゃいました。

記録部という職場なんですけど、1課から4課までありまして、管理職と副部長というポストがあって、管理職は5人しかなれず、あとの人は管理職になれずに退職するわけです。

そうすると退職金や年金がかなり違ってきますので、皆ある年齢になりますと管理職になるべく、上司に対して、これも言葉が悪いんですが、ごますり競争が始まるんです。

私の場合は速記が好きで速記士になりまして速記だけをしていたかったので、そういうごますり競争みたいなものに入りたくなかったんです。

ごますり競争が始まりますと、例えば仕事が終わって皆で飲みに行ったりすると、今度は誰々の給料が何級の何号俸になったとか、あいつが今度は課長になりそうだという面白くもないような噂話で盛り上がるような世界なんです。

そういうのが非常に面白くなく、永年継続表彰が25年か35年であるんですけど、25年の永年勤続表彰で退職したんです。

その後パソコン教室のオーナーをしたり、民間の会社で印刷会社のようなことをしたり、少々変わったこともしてみたいと思ってビルの警備業務もしてみたりしたんです。

けど、結局何と言っても速記が好きなものですから、東京の会議録研究所という速記会社に入りました。

そこで正社員として勤めていたんですけど、結局民間の速記会社でも速記だけしていればいいというものではないんです。

面白くないというか私が一番嫌いな会議があったり、国家認定も受けていましたのでそれについての作業があったりで、速記の業務だけに打ち込めないんです。

担当者と相談したところ、それだったら在宅勤務にすれば速記の校閲だけで済みますよと言われて、その会社は2010年の8月に形式的には退社というかたちになって、同時に業務委託契約というものを締結しました。

それで在宅勤務で、その会社からネット経由で仕事を回してもらって続けていたんです。

ただ基本的に速記会社の仕事というのは議会関係の仕事がメインで、民間の議会というのは3月6月9月12月の年4回なので、繁閑の差が非常にあるんです。

私が在宅勤務に移った頃は、会社が委託先から仕事を受注する方法も、まだ随意契約が多かったんです。

要はおなじみさんということで入札などはせずにお互いのなれ合いの金額で仕事を受託できていたんですが、ここ数年どんどん各自治体も競争入札に移行しまして、今はほとんど競争入札になっているんです。

そうすると受注するために異常に安い価格で札を入れてくる速記会社が出てくるので、受注するためにはそれに対抗するために入札単価を下げる必要が出てくるんです。

それで私がいた会社も、トータルとしては10年前と比べて総受注数は変わらないんですけど受注単価は落ちているので、営業利益が落ちているんです。

ですので、私の受け取る給料もかつての繁忙期は40万円ぐらいあったんですけど、ここのところ30万円ぐらいにしかなっていないんです。

繁忙期で30万円ですので、閑散期の今月などは20万円ぐらいにしかならず、それでは生活ができないものですから副業を考えなければいけないなと思いまして、それで「Shufti」に登録して今回御社にもお願いしてお仕事をさせていただいている次第です。

速記士になるまで

――速記士になろうと思ったきっかけは何でしたか?

私の父が建設省の下級官吏で、地方の結構暇な国道管理事務所に配属された時に仕事が少なくて、早稲田速記の通信教育も受けていたという話も聞きました。

それなら一度そういうことも面白そうだなと思って、中学生の時に少しテキストを見せてもらってかじっていたことがあったんです。その時に非常に興味を持ちました。

その時点では興味を持っただけなんです。高校卒業にあたって、卒業後大学に進学して教師になろうと思っていたんです。

けど、同級生の様子なども観察していますと中学や高校の教師になってこんな連中相手に教えるのも教え甲斐がないと思いまして、教師になるのは止めようと思いました。

そうすると次に出てきたのが、中学生の時にかじった速記という方面なんです。それで高校3年生の時に早稲田速記の通信教育を受けて、資格を取得できたんです。

1年で2級まで取りましたので、その時は大阪の高槻市という所に住んでいたんですけど、そこで東京の速記事務所に紹介していただける先生がいらっしゃったので卒業と同時に東京の速記事務所に就職した次第です。

速記士の資格

――速記士になるために必要な資格について教えてください。

私が受験した時はまだ文部科学省ではなくて文部省だったんですけど、文部省認定の速記士検定試験というものがあります。

私の頃は1級から5級まで、今は1級から6級まであるみたいですけど、2級に受かって準速記士、1級に受かると速記士になることができます。その試験に合格することがまず必要です。

――速記士になるとどういった所で活躍できますか。

国会の速記士は国会オンリーなんですが、私が入った頃は外部の仕事がありました。要は公務員でありながら、内職で民間の仕事をするわけです。

ただそういう仕事は違法なので、摘発される前に自ら風紀を律しようというわけで、もうその制度は廃止しましたので、衆議院では国会の仕事しかしませんでした。

――色んな年代の方が働いていらっしゃいますか?

国会の場合は本当にピンキリで、若い年代から定年退職する年代の方までいますけれども、民間の会社は主に若い世代が中心です。

速記士になるためには

――速記士の仕事に求められることはどんなことですか?

まず何よりも速記の技術ですね、それがなければ話になりません。それから集中力ですね。

それから技術的な話で言えば、日本語表記するために必要な文字遣いがある訳です。そのために用字例というものがあります。

例えば日本速記協会という公益社団法人がありまして、そこが標準用字用例辞典というものを発行しているんです。

これは衆議院の用事例からに準拠して作っているものなんですけど、衆議院の議録は縦書きで民間の会議録は横書きなんです。

そうすると何が一番違うかというと、数字の書き方が違ってくるわけです。縦書きだと基本的には漢数字なんですけど、横書きだと算用数字になってくるんですね。

ですので、その辺りが速記協会が出している用事例では説明が付け加えられていたり、新たな表記が加わっていたりして違ってきます。

そういったものは完全に覚えていく必要があるんですけど、これも結局仕事の量をこなしていかないと覚えられないものですから、なかなか在宅の入力者の方でも覚えていない方が多くて、そういう意味では結構泣かされました。

速記士にとって致命的なミス

――速記士のお仕事をされていて困ったトラブルはありましたか?

今回「Shufti」に登録させていただくにあたり、会議録研究所との業務契約は、解除ではないんですけど休業というかたちにさせていただいたんです。

なぜかといいますと、やってはいけないミスが3、4件続いてしまったんです。

用字例のミスというのは命取りにはならないんですけど、人の名前が違っていると致命的なんです。

あと、例えば発言者の前に丸印がつくんですけど、そういうものが落ちていたり、ゴシック体にしなければならない所が明朝体になっていたりする致命的なミスが続いてしまったんです。

なぜそういうミスが続いたのか自分でも分からないんですけど、いずれも一番忙しい時期であったことは確かなので、疲れが溜まっていたのかなという気もしています。

先程も言いましたように繁忙期にもかかわらず収入が少ないという不安が内心あったのが、無意識のうちにそういうミスに繋がってしまったのかなというところもあります。

いずれにしても人名系のミスは絶対にやってはいけないんです。そういうミスを出してしまったのが致命的でした。

速記士の勤務時間

――1日の勤務時間はきっちり決まっているものですか?

民間会社の時は、始まりの時間は朝の9時です。一応8時間勤務なんですけど、残業手当という概念がありません。

契約書自体はよく見ていないし見ても法律的な知識が無いのでよく分からないんですけど、毎日だいたい夜の20時くらいまでは仕事をしていました。それでも帰るのは早い方でした。

その頃はそれで慣れていましたので、体調は問題無くやっていました。

在宅になると、夜の21時にベッドに入りまして朝の5時に起きます。6時から仕事に取り掛かりまして夜の7時半まで仕事、その間に1時間半か2時間ぐらい昼食と夕食時間が入ります。

19時半から21時まで、のんびりというほどの時間ではないんですけどプライベートな時間がありまして、それで21時にベッドに入るというパターンです。

収入と昇級

――収入にばらつきはありますか?

在宅になってから形式的には自営業者になりますので確定申告はしているんですけど、毎年落ちています。

これは先ほど申しました各自治体の発注方式が随意契約から競争入札に変わって、時間あたりの単価が落ちたのに並行してです。

正社員の時は毎月同じです。残業手当もありませんし、決まった額しか入ってきません。昇級はありません。

速記士になって思うこと

――速記士になって良かったと思うことはなんですか?

私は速記が好きですので、好きな仕事で食べていけるのが幸せなことです。

――速記士になってつらい思いをしたことはありますか?

今までは無かったんですが、今回休業に至った原因になった致命的なミスを自分で出してしまったことには、悔いが残ります。

――速記士として働くうえで注意するポイントはありますか?

仕事に対する注意力を常に保ち続けることですね。

――働くうえで参考になるものはありますか?

調べ物は必要ですので、インターネットに繋がっていなければならないですね。Googleの検索は必要です。

――速記士に向いている人と向いていない人はどういう人だと思いますか?

几帳面な人は向いているのではないかと思います。仕事自体が細かいですし、一言一句に注意しなければならない仕事ですので、大雑把な人は不向きだと思います。

衆議院の速記士がお薦め

――速記士になりたいと思っている方へのアドバイスをお願いします。

民間の速記会社は仕事もきついですし給料も安いですし待遇も良くありませんので、ぜひ努力して技術を身に着けて、衆議院の速記士になることに努力されるのがよろしいかと思います。

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