倒産寸前の会社を立て直した経営者の体験談
ウェブ系の会社を経営されている37歳の男性に経営が苦しくなった状況からどのように立て直してきたのか?どん底から這い上がる為にしてきたことを聴かせていただきました。自分の会社の苦しい状況は中々話したくないお話なので貴重な記事と思います。
まともな経営をやっていなかったことに気付く
会社の仕事内容について教えてください。
ウェブ系といってもいろいろあると思うんですけど、インターネットの集客とかを主とした仕事です。
特にうちの会社が得意なのはSEO対策といった集客面であり、あとは自社のサイトを作るとか、メディア運営的な仕事を現在はやっています。
ほとんどそういう請負の仕事というのは、本当に一部のお客さんだけを絞ってやっている状態なんです。
でも独立した当初に自分自身がSEO対策に自信があったものですから、ホームページをいろんなお客さんに売って、SEO対策とかホームページ作成もそうなんですけど色々売っていったら、もっと大きなお金を稼げるんじゃないかという思いがありました。
で、営業マンとかも雇って、いろんな請負の仕事を取ろうと頑張っていたんですけど、それがどんどんチグハグになって、イマイチ収益が伸びないなと思っている状況になりました。
その上、検索エンジンの状況というのがすごく悪化しまして、自社の売り上げもかなり落ちまして、一気に経営がピンチになったという形です。
売上が落ちた時というのは、正直どうすればいいんだっていう感じになりましたね。
自分の中では最も自信のある仕事だったんで、自分らにとって最も自信のあるSEOというのができなくなったということで、すごく動揺しました。
その時に初めて、今までまともな経営というのをやってなかったんだなと、技術と経営は違うなっていうのをそこで本当に知りましたね。
単純に技術ができたものだから、何か会社にしても儲かるだろうという結構軽い考えでスタートしたというのもありました。
これって会社じゃなかったんだなっていうことが初めて思い知らされたというか、単純にたまたま上手くいっていただけなんだということをすごく思い知る羽目になりました。
だから実際に落ちても、じゃあどうやって指示をすればいいかもわからないとか、今までは売り上げというのに困ったこともなかったので、すごく酷いお金の使い方をしていても、そんなには気にならなかったんですよね。
どうせ残っていても税金で取られるだけだからみたいな、経営者としては本当にダメな考えなんですけど、そういう考えでやっていた部分もあって、自分自身がいかにダメだったかというのを本当に思い知らされましたね。
だから本当に、経営っていうのは甘くないんだ、売上さえ上げればいいという、そういう世界でもないんだなということです。
落ちた時にどうすればいいのかというのが本当にもう分からなくなったので、困りましたね。
新しいサービスを起ち上げようとしたが…
売り上げを立て直すためにやったことはなんですか。
最初は色々あがくんですね。とにかく目の前のお金を取りに行くというのを、まずやりました。とにかく来月のお金がないということで、当時は取締役の人間が1人いたので、2人で話し合いました。
僕の意見としては、アルバイトさんとかその時いたスタッフに全員辞めてもらおうという考えが強くて、全員辞めてもらったらまた立て直すことは可能だという形になったんです。
でも彼は逆で、元々彼と一緒に個人事業状態から立ち上がったというのもあって、せっかく広い事務所も借りてアルバイトも育ってきているという状態で、全員をクビにすることはできない、やりたくないと言い出しました。
そこで無理矢理押し切っていたら、正直楽だったと思うんです。一気に人件費を削除したら無理な仕事を取る必要もないし、非常によかったんです。
けど、僕自身もアルバイトさんとかと仲良くしていたというのもあって、あまり切りたくないなという、変な意地みたいなものもありました。
これは正解か不正解かといったら、当時で見たら正直、不正解じゃないかと思います。情に流された部分もありました。
じゃあ売り上げを上げるしかない、固定費の削減というのがそんなにできない、人件費の削減ができないんだったらもう売り上げを今以上に上げるしかないなっていうことで、色々あがきましたね。
で、最初は何か新しいサービスを起ち上げるみたいなことをやりだすんです。目の前のお金を取るためにホームページ作成とか、それだと全然お金にならない、ダメだってことで、じゃあ新しいサービスを起ち上げようとしました。
しかし、大体そういう時に新しいサービスを起ち上げようと思うと、ダメなサービスでも自分の中でいいサービスだという風に解釈しちゃうんですよね。
今お金がないというか、お尻に火が付いてる状態というのは、全部が正しく見えてくるんです。だから正しい判断が出来なくなってくるんですよね。その時点でだいぶ狂ってたかなと思うんですけど、とにかく色々やりましたね。
地域密着型のウェブ系セミナーをやろうとかいって、セミナーに必死こいて1ヶ月以上かけて3、40人集めたけど、結局その後お客さんに結びついたのはほとんどありませんでした。
確かに相談とかも来るんだけど、どちらかというと、うちを良いように使ってやろうみたいなのが見え隠れする、あまりこちらとしても付き合いたくないなっていう人らばっかりでした。
実際にそういう人らとも、目の前のお金が欲しいからってことで仕事を引き受けたら、とんでもなく大変な仕事を安く引き受けて、痛い目もたくさん見ましたね。
その中で、色々あがいてきた結果どんどん売り上げが悪化していきました。銀行からの追加の借り入れというのも、銀行から元々借り入れが、そんなウン千万とかそういう金額じゃないですけど多少ですけどあったんです。
その時はなんとなく、銀行から余裕がある時に借りといた方がいいのかなという軽い考えだったんですけど、あっという間に吹き飛ばして追加で借り入れという形になったんです。
その追加の借り入れもなくなったら完全に何とかするしかないっていう状態になって、その借り入れがまた、たったの300万ぐらいしかできなかったんですけど、その300万を元手に何かしようってことになりました。
で、色々考えてあがいた結果、最終的には営業しかないなと思いました。自社のサービスの中でも特に良い物は何かというものだけを、今まで持っている資産を売るって感じですよね。
考えに考えぬいた結果、うちの中では1つだけ、そのサービスはすごく地味で面倒臭い作業なんですけど、それを代行でやれないか?と思いつきました。
よく見直すと、それを欲しがっているお客さんは結構いるんじゃないかってことで、代行サービスみたいなのを急遽作りました。
そのサービスを売るために、その当時は三重県の方で会社をやっていたんですけど地元で使ってくれる会社はほとんど居ないだろうと判断して、東京の方まで営業でとにかく回りまくっていましたね。
安い夜行バスを利用して営業
交通費とかもそんなに出せる状態じゃないので、移動は全て夜行バスです。
その当時はウィラーっていう夜行バスだったんですけど、夜行バスを使うことで一番安いプランだと三重県からでも3800円とか、4000円切るぐらいでいけるんですね。
一番安いプランだとちょっとしんどすぎるんで、プラス4~500円ぐらい上乗せの4千2~300円ぐらいのプランで行っていたと思います。
そのプランで行くと終点はディズニーランドなんですけど、ディズニーランドには当然用事がないので、途中の西新宿で、新宿の西口かちょっと忘れたんですけど、そこで下りていました。
朝6時ぐらいに着くのですが、ちょうど夏ぐらいだったので、別にエアコンは効いていないわけじゃないんですけどやっぱり汗だくになりました。
スーツも汗だくになるので、だから漫画喫茶でシャワーを浴びてキレイにしてから営業に回るスケジュールでした。
その後、営業でとにかくアポイントを東京で入れまくって、会える人は片っ端から会いに行くというのをやりましたね。
地元も一応回ってみたんですけど、ウェブというかインターネットに対する価値観をはじめとする全てが全然違いました。単価とかも感覚値が違いまして、相場がとにかく東京の3分の1ぐらいでした。
自社で売ろうとしているサービス自体が結構マニアックで、多分ここで説明してもみんな分からないというぐらい、一部の人だけ欲しがるという結構マニアックなサービスでした。
それを欲しがる人は少なくとも三重県にはほとんどいないだろうということで、東京まで売りに行っていました。大体夜の飲み会とか、そういうのまでガッツリ参加していました。
夜の飲み会とかは先方の方も「わざわざ三重県から来てくれているから」ってことで、まあ経営者の方たちと会うことが多かったので、出してくれる方が多かったんですけど、当時はその言葉にすごく甘えていましたね。それは正直言ってすごく助かりました。
その後は充電ができるカプセルホテルへ移動。3500円ぐらいのところに泊まって、携帯とパソコンを充電して、パソコンでチョコチョコ仕事した後寝て1日が終わる感じです。
次の日、朝起きてまた回るというのを、2、3日とか、長い時は1週間して、その後また夜行バスで帰って、そのまま大阪へ行くということも多々ありました。
大阪でも欲しがる人はいるので、営業にはよく回りました。大阪に関しては友人の経営者ですごく仲のいい人間がいたので、彼の家に泊めてもらって宿泊費を節約しました。
彼も結構応援してくれたんですけど、そういう形で何とか、営業を回っていくうちにそれが結果として結びついたのは、結局3ヶ月か4か月後ぐらいです。
年末辺りですね。11月ぐらいとかに一気に売り上げが上がり始めて、売り上げのほうは何とか立て直すことができたという感じですね。
単純にやるべきことをやる
やっぱり苦しい時というのは判断ができないものですか。
できないですね。多分誰もできないんじゃないですかね。
今はいないんですけど、うちのその当時の取締役とかも、僕から見ていても彼ほど精神的にタフな人間はなかなかいないなと思えるレベルだったし、実際に今いろんな方とお会いする中でより一層強くそう感じています。
彼の元々の家庭環境が結構過酷だったというのもあって、そういう面ですごくタフだと思うんですよね。そんな彼でも当時はやっぱり判断を誤りまくっていました。
僕はどっちかというと精神的に強い方でもなかったというのもあるんですけど、そんな彼でも誤りまくっていたんです。
今冷静に考えたら、やっぱり仕事で売り上げが立っていない時点で人を切るっていうのから最初にやり始めた方が良かったんじゃないのかなと思いますね。
とにかくいたるところで選択しなくてはいけないケースが出るのですが、ほとんど間違えていたと思います。
苦しくなると、自社を立て直すためって、イチかバチかを考えて新しいサービスというのを始めたがる人もいると思うんです。
これは他でもよく聞くんですけど、それは本当にすごく最悪なパターンだと思いますし、もっとも経営絵悪化の原因じゃないかなと思います。
後から考えたら、あんなサービスが受けるわけないって冷静に考えたら分かるんですけど、その時は全くもって客観的視点で見られないですからね。
実際にお客さんを取る時には、工夫というかどうかわからないですけど、単純にスーツにネクタイというだけで「マジメですね」と言われることが多かったです。
インターネットの世界って多分、ウェブ系は特に多いんですけど、ホリエモンとかの影響でしょうね、Tシャツとかそういうカジュアルな服装で働いている方というのが多いんです。
普通に上場企業とかに行っても、内勤スタッフだったりとか、それこそ社長でもせいぜいジャケットを着るぐらい、ジーパンにジャケットを羽織るくらいとカジュアルでした。
普通にTシャツの人とかも結構多くて、その中でスーツと靴で行くだけでも真面目だと思われる。単純ですけど、それはやった方がいいのかなって思いました。
今、クールビズとか流行っていると思うんですけど、夏でもネクタイを付けるとか、それはもう結構単純にネクタイを付けた方が紳士的に結構伝わるのかなという気はしますよね。
やっぱり、ネクタイを褒められること多かったですよ。
あとは単純にやるべきことをやりましたね。営業をまともにやったことがなかったので、本とかインターネットとかで調べたりして、「ああこういうお礼状とかも出した方がいいんだな」とかね。
お礼状の手紙の書き方みたいな本を買ってきて、それを参考にお会いした次の日にお礼状を送ったりしました。そうすると、やっぱり喜んでいただけましたし、だからやるべきことを単純にやったのかなという気はします。
虚勢を張らずありのままの自分で
あとは工夫じゃないですけど、とにかく開き直りというか、虚勢とかは一切張らなかったですね。
営業に行くと先方から逆に営業されることも多いんですけど、大体営業マンの人って結構強気な感じです。
多分そういう本とかの影響もあるんでしょうけど、殿様セールス的な形で、こっちが下手に立っちゃダメだ的なことを教えている本とかも結構あるんです。
それはそれで別に正しいとは思うんですけど、僕はもう全く逆に「今にも会社が潰れそうです」みたいな、「赤字でもう結構きついです」っていう状況とかを正直に話していました。
だから営業に行くというより、どっちかというと経営者に相談しに行くみたいな状態だったんです。これは別に狙っていたわけでもなかったんですけど、普通にいろんな方を紹介してくれましたね。
もちろん中にはそれだけで離れていく人もいっぱいいたんですけど、逆にそれでも普通に接してくれる人とか、それこそ皆が知っているようなすごい社長を紹介してくれることがあったりとか、人には本当に助けてもらいましたね。
その時、自分が虚勢を張っていても100%見抜かれていたと思うんですよね。
他の人の虚勢って、自分から見ても「ああこの人、力強く言ってるけど苦しいんだろうな」って感じることが多々あるので、どうせ見抜かれるんだったらと思って、自然体というか常に素でいましたね。
そしたらまあ、本当にいろんな人を紹介してもらえて、本当に周りの方のおかげで売り上げが上がっていったという感じはありましたね。普通でいるというか、素でいるというのは大切なのかなと思います。
お礼状とか、結構当たり前にやることなのかと思ったんですけど、やる人は少ないみたいでした。
特にウェブ系とかだったら普通にメールで終わらす人の方がほとんどなので、手紙なんて鬱陶しがるだろうと思っている方もいますけど、やっぱり年輩の方とかだとすごく感動します。
若い経営者とかだったら面倒臭いとか怖いと思う人もいるかも知れないですけど、年輩の人たちは喜んでくれる方が多かったですね。お歳暮とかよりもそっちの方が全然いいんじゃないですか。
お中元とかよりも、別にお礼状に対してお礼状を返してくるってことは普通はないので、単純に相手は受け取るだけなので、そう考えるといいんじゃないのかなっていう気はしますね。
素直に自己開示はしていましたね。本当に素直にしていたし、だから全員、その当時も苦しいって、周りの人全員が知っていますね。
その当時、苦しい時に助けてくれた人っていうのは、今でもすごくいい関係を築けています。僕自身がそういった苦しい環境で学んだことを、逆に少しですが相談に乗ることが出来たときなんかは嬉しいですね。
それ以降、自分自身もそういう人の方が格好いいと思うようになりました。
自分が築き上げてきたために、自分が遊ぶために自由な事をしたいがためにやってるという、結構資本主義的な経営者って多いじゃないですか。
何かいい服を着て、いい車に乗って、僕自身もどっちかというとそういうものに憧れというのはあったのが本音です。
お金とかをガッツリ使って楽しむというのに憧れがあったんですけど、色々な方に助けてもらって以降は本当にそういうのがなくなって、恰好良さの基準みたいなものが自分の中ですごく変わりましたよね。
プラスで社員を雇ってしまい…
良かれと思ってやったことで失敗したことはありますか。
とにかく焦りから判断基準がメチャクチャで、常に判断ミスしてたんじゃないのかと、思い出すのも恥ずかしいですね。
良いと思って発言したことが相手を怒らせてしまい、新しいサービスを立ち上げて失敗したとかもそうなんですけど、その時は絶対いけると思っちゃうんですね。
だからそれ以外でも、とにかく良かれと思ってやってきたことほとんどが失敗だったなと思いますね。
あとは東京とかで回っていても、良かれと思って他の人を紹介したら、そんなの紹介されたら困るみたいな感じで、お叱りを受けたこともありましたね。
けど、まあもう仕方ないかなという感じでその時は割り切っていたんですけど、いま思い返すと相手の方には迷惑を掛けたなと反省しています。
それで関係が切れちゃったみたいなこともあったりしました。そういうこともありますよね。
あとはプラスで社員を雇ったのは失敗しましたね。それが一番失敗したかもしれないです。
自分が営業苦手だからとか言って、既にもう人件費を圧迫している状態なのに、起死回生みたいな感じで、どれだけ成績を上げられるかもよく分からない営業マンを何となく人柄だけで雇ってしまったんです。
そうしたらその子は全然できなくて、こちらは即戦力を期待していたのに、営業を教えてもらうのをずっと待っている人でした。
それなのに、全く売上を上げてこないくせにボーナスとかすごく言われたりするので、全然ダメだなっていう状態だったんです。
彼だけでも営業マンなことから、普通のアルバイトの何人分もあるわけなので、プラスの人件費を圧迫して相当きつい思いをしました。
普通のバイトとか主婦の方たちも多くて、まあ少ないと6万、多いと9万円から10万円の中で、彼一人で25万円以上払ってたので、それで売上を全然あげて来なかったらかなりきついですよね。
それが自分の中で一番の失敗です。自分ができないから誰かに祈ってしまった、頼ってしまった。誰かをアテにしてしまった自分の弱さが出た形ですね。
ダスキンからセコムまで徹底した固定費削減
固定費は、どれぐらい削減できましたか。
その時自体がもう、パソコンを使う仕事だからってセコムに入ったりとか、無駄にすごく使いすぎていました。
冷静に考えたらパソコンを持って行かれたとしてもパスワードをすぐチェンジすればそんなに困ることも無い。あとから考えたらアホらしいと思うんですけど、起業時はお金があるので無駄にセコムに入ったり、広い場所を借りたりしていました。
営業周りが上手くいって売り上げが上がってから、今度は徹底して固定費の削減というのに入ったんです。もう無駄なものは全部外していきました。
ダスキンに無駄に頼んでいたのとかも、月5000円だけどすごくもったいない。本当にお金に関する価値観とかものすごく変わりましたよね。
ウィルスのセキュリティとかも、安いものに切り替え、あとはアルバイトでもできない人は辞めてもらい、さっき言っていた社員の人間にも当然辞めてもらいました。
あとは事務所の縮小ですね。それが固定費削減ではやはり大きかったですね。それだけでも10万円以上は軽く変わりましたね。
その後は、売上は営業でバンバン走り回っている時というのは、やはり上がりましたね。
売上が一気に上がって、うちは年末が決算だったんですけど、年末までには黒字になったかなと思えるぐらいでした。
ちょっと黒字になったかなというぐらいだったんですけど、結果的には売掛という状態だったので、まあ赤字にはなりましたけどね。まだそれは入ってきてないというだけで、翌年きちんと入って来ました。
会社は立て直しましたけど、次の年は人員整理や会社内の整理だったりと、そういうのはかなり手間と時間を費やしたので、次の年が逆に売り上げというのはすごく落ちました。
整理に時間を取られすぎて、新しい売上を上げるとかそういうのもなくなって、その分経費をすごく落とすことに成功したので赤字にはまったくならなかったんですけど、1年間はほとんどそればかりに追われましたね。
社員やアルバイトのリストラはするほうも辛い!
社員やアルバイトをリストラした時はどんな気持ちでしたか。
アルバイトにしても社員にしても、人を切るというのは想像以上にパワーを使いました。やっぱり辛いですね。
特に営業の社員を切る時というのは、何せ営業マンだけど売上を上げていなかったわけだから抵抗はなかったんですけど、もめると嫌だなと思っていました。
で、売上とかを見せて、もううちの売上はこんなにヤバいという状況を見せて、だから悪いけど辞めてもらえないかみたいな感じで、訴えられたりしても困るので下から出る形で伝えました。
そしたら、「まあ、仕方ないから辞めたるわ」みたいな感じで吐き捨てられたのは、本当に腹が立ちましたね。
その時は本当に、何でこっちが折れなきゃいけないんだろうとかいうのとか、それはもう本当に悔しい思いをしましたね。
元々彼を雇ってしまった自分自身が悪いんですけど、その経験から、人を切るというのはすごくしんどいなと思いました。インターネットで他の会社のを見ていると、もっとひどいことも沢山あるみたいですけどね。
あとは頑張ってくれたアルバイトも、成果を上げていないとかそうなると、どうしても切らざるを得ないしということですね。それもしんどかったですね。その日1日凹みました。
会社の経営者自身が切るというのもあるんですけど、そのまま降りかかってくるので、人を切る時というのは怖いですよね。
最近も実は失敗しました。試用期間はいつでも辞めてもらうよみたいな感じで最初から念押ししていたのに、辞めてもらったら逆恨みのように労働基準監督署に行かれました。
別に労働基準監督署も、こっちが悪い事しているわけじゃないので何か言われるわけでもなかったんですけど、そういう行動自体にまたイラついたりしました。
人を雇うというのは大変だなというのは、すごく感じますね。今でも感じます。切る時はとにかく大変なので、雇うことに対しても本当に慎重になりましたね。それでも失敗するのですが(苦笑)
ただ、それもあってか、逆にすごく頼りになる人が一緒に働けるとすごく嬉しいです。
潰れかけの会社を立て直すまで
立て直すまでにかかった時間はどれぐらいですか。
最初の半年ぐらいで売上自体を上げることには成功したんですけど、その売上をずっと維持するというのはかなりきついなというのは分かっていたんですね。
自分自身も夜行バスで東京まで行って、帰ってきてはまた夜行バスで東京行ってみたいな、そういう生活を繰り返していたので、体力的にも相当きつかったというのもあって、この売り上げを維持してくのはかなりきついと思いました。
それで根本的に経費削減に走って、クラウド化とかを取り入れることでだいぶ変えていき、そこから人員削減もするんですけど、切っていくのもまとめて次の日に全員クビとかいうわけにもいかないので、そういうのを色々考えながら進めました。
あとは一番時間がかかったのが、目の前のお金欲しさにやっていた安い仕事があるんですけど、それを切っていくのがとても大変でしたね。すごく迷惑はかけたと思います。
こっちも安くても何でもかんでも引き受けちゃうみたいな感じもあったので、結局他の企業との信用も失うことになるので、これも大きな判断ミスのひとつだったと思います。
立て直したら立て直したで、そんな仕事なんてやってられないとなるんですよね。
目の前のお金という面ではすごく助かったんですけど、毎月それをやっていっても絶対会社としては儲からない、伸びないというのが分かっていて、そうするとお断りに行くしかない。
そのお断りに行った時にはすごいたくさんのお叱りを受けました。当然なんですけどね。
数自体もそんなに取っていなかったですけど、もう1人他にも営業で僕自身も回っていたり、取締役の人間とかも営業に回ったりしていたので、それで安い仕事を切る時は本当に時間がかかりましたよね。
何年契約とかいうのがなくて幸いだったと思うんですけど、それがあったら正直ぞっとします。
でも、半年ぐらいは安い仕事に振り回されることが多くて、新しいことじゃないですけど本当に自分がやらなきゃいけないことがなかなかできない状況が1年以上、1年半ぐらいはかかりました。
で、1年半経ってからようやく新しいことを色々始めていけるという感じでした。
その新しいこともやるべきことはきっちり分かってきているんですけど、最初からいきなり、それをやったら次の月にいきなり収益が伸びたとか、そういう形のものではなかったんです。
なので、それを伸ばすのにプラスでまた1年ぐらいかかっているので、事業としてきちんと回るのには2年半以上はかかっています。
経費の削減を最初にしっかりやっていたので、その分時間はかけられたんですけど、立て直すまでは苦労しましたね。
目の前の売上を上げるだけなら簡単なんですけど、それだけだと問題は解決しません。穴のあいたバケツに水を入れてもダメという例え話と同じように考えていただければと思います。
倒産の危機を乗り越えて
色々あがいた中で、最も効果が高いと思ったことはありますか。
自然体でいること、虚勢を張らないことですね。自分から弱みを見せられるぐらい腹をくくれるのが良いかなと思います。
自分から弱みを見せることで離れていく人もいるけど、応援してくれる人だけと一緒に付き合っていけば、本当に応援してもらっているというのもあって、こっちも全力で頑張れるし期待に応えようとします。
今でもそれは変わらないですけど、その時の意識は今でも変えないようにしてるんですけど、とにかくやっぱり小さな会社なので、自分自身の意識を変えるのが一番かなと思います。
売り上げが落ちた時でも、最初はカッコ悪いからあまりばらしたくないとか、そういうのもあったんですけど、最終的にはアルバイトとかでも会社の状況がヤバい、まずいということを分かるぐらい、そういうのはオープンにしていましたね。
そうすることでクビにするというわけじゃないですけど、ごめんなさい、辞めてもらうしかないですとなったら、まあ仕方ないですよねっていう感じで相手も納得してくれます。
残ってくれた人たちは、チーム力というか結束というか、そういうのが高まるので、全部オープンにするというのはいいと思いますね。
オープンにすると全部変わりますね。変に隠す人もいますけど、隠すよりもオープンな方が、周りを見ていても得な人が多いですよね。
売り上げの上下とかは誰にでもあるので、やっぱりみんなそれぞれ苦しい思いとかしてきているんです。
経営していたら分かってきたんですけど、そのままずっと右肩上がりの人ってほとんどいない。そんなに人脈が広いというわけでもないですけど、僕が知ってる中でも1人か2人ぐらいしかいないです。
そういう時ってやっぱり誰かに助けてもらったりしていて、そういう人はオープンな人が多いですね。
隠していると苦しいかどうかも分からないから、助けようにも分からないし、別に人を頼っているというわけじゃないんですけど、正しい道を示してもらうだけでもすごく助かりますよね。
お金をもらうとか仕事をもらうだけが応援じゃないので、そういう意識的な部分で教えてもらったり、経営とはこうあるべきだというのを教えてもらったり、それはすごく参考になったので、そういうところですかね。
「あの時よりマシ」と思えるように
その苦しい時期から、何か得られたものはありますか。
一番得たのは、「あの時よりマシ」と思えるようになったのは大きいかなと思います。あとはプライベートな話になりますけど、嫁さんとも仲良くなりましたよね。これもよく聞くケースですよね。
それまで会社が上手くいってる時とか夫婦関係は悪かったけど、会社がどん底に落ちた時に嫁さんに助けてもらいました。意外とそういう時って女性は強いなと、思いました。
周りでも嫁さんに助けられたという話は結構多くて、それまでは浮気したり不倫したり女遊びをチャラチャラしていたという人も、今は一切しなくなったとか、本当に嫁さん命みたいな、そういう夫婦仲が良くなることは多いですよね。
あとは本当に信頼できる人間だけというか、お金だけに寄ってきてる人間が手のひら返して離れていくことで、誰がそうだったのか全て分かったので、自分が好ましくない人間関係がなくなりました。
別にお金持っている人同士の付き合いがダメというわけではありませんが、僕には合わないですね。
合わない人とのお付き合いが無駄というわけじゃないんですけど、いい意味でそぎ落とされたというか、良い人間関係だけが残ったというのは非常に大きいかなという気はします。
あとはお金の価値観の基準が出来て、価格の決め方が上手になりました。
売上がいい時って本当にどれぐらいの価格を付けていいかというのがイマイチ分からないんですけど、売上が下がった時に、こういう金額を付けた方がいいんだなとか、上と下を両方見たことによってバランスみたいなものがすごく取れるようになりましたね。
そんなに上といっても大した上じゃないんですけどね。資産何十億とかそんな世界じゃないですけど、それでもやっぱり、そういう差を見ることによって間が取れるというのはありますよね。
自己啓発本みたいな感じになっちゃうかも知れないですが、自分から苦しいことに飛び込んでいくというのを意識してやってるという人、本当にいたりします。意外と間違ってはないのかなという感じですね。ただ苦しみ方にもよりますけどね。
例えばお金に目が眩んでFX投資とかに金を突っ込んだとか、個人的にとか、ギャンブルにお金を注ぎ込んだとかはどうかなと、どこかの有名会社の社長がすごいお金をギャンブルに注ぎ込んだとか、ああいうのはちょっと違うのかなと考えたりします。
間違ったとしてもその時は正しいと思ってやってきたことが、失敗すると、見えるものというのはまた変わるかなという気はしますね。
古い友人を失う
逆にその期間に失ったものはありますか。
友人は失いました。新しい友人はできたけど、古い友人は結構失いましたね。
それまでは本当に毎日のように電話したり、それこそ一緒に仕事したりしていた友人、1週間のうち顔を合わさない日の方が少ないという友人も、ほとんど会うことはありません。
別に今、喧嘩して絶縁状態というわけではないんですけど、会わなくはなりましたね。環境が凄く変わっちゃったことが大きいです。目指すべき場所や価値観も大きく違います。
トラブルというわけじゃないですけど仕事で意見が対立したとかそういうのもあって、どことなくぎごちなくなって、一緒に遊びに行くとかそういうのはもうあまりなくなっちゃいましたね。
他の友人や仕事仲間でも、売り上げが落ちたことによって僕がガツガツしているというので怖がって離れていった人もいますね。それは仕方ないのかなと思います。
正直、人を見る目は今でもないとは思うんです。あったら、さっきも言ったようにアルバイトで労基に駆け込むような人が出たりとかしないですからね。
まあ面接だけだから分からないというのもあるんですけど、1日2日いたらすぐダメだと分かったんですけど、それでも人を見る目という面では、ないとは思いますね。
多分、分からない人は本当に分からないんじゃないかなと思います。
自分自身はそういう経験もないので分からないですけど、周りで自分よりはるかに能力の高い人が普通に詐欺みたいなことに騙されたりしているのを見て、すごく驚くわけです。
傍から聞いていたら胡散臭いとしか思えないようなことが、すごい人なのに騙されたりするんですよ。
僕から見ていても本当に能力の高い人らばかりがそういうのにやられて、失敗したりとかも結構何人も見ているので、そうすると人を完璧に見抜くというのはなかなか難しいのかなという気はしますね。
今はとにかく人を見る目がないと割り切って、とにかく連帯保証人になるのと、ネットワークビジネスの2つはやめておこうみたいに思っています。
この2つは大金か友人のどちらかをかなりの確率で失うので、だからその2つを止めておくのと、あとは投資系の話は一切乗らないということですかね。
周りを見ていると投資話で騙されることが多いので、そういうのは結構、意識的にしています。それ以外に関しては正直ちょっと騙されても仕方ないかなという感じで割り切るようにしています。
仕事で不払いであったりとか、そうなってもいいように考えておく。だから仕事でお金が払われなかったときを覚悟して動くみたいなことにしていたら、そう潰れないのかな。
実際に、普通にお金を払わない、ごまかしてくるところとかも結構あったので、そうするとこれは普通に日常的にあるんだなというのが分かってきたんです。
だからもし払われなかったとしても大丈夫という形の仕事や、大きな仕事であっても、こっちが先に、例えば200万円かけて300万円得られる仕事みたいな感じで、その200万円がない状態だったらもう引き受けないようにしています。
その200万円でもし万が一払われなかったら潰れるかも知れないとか、本当に周りでよく耳にする話ですからね。
万が一、人とか会社の関係とか失敗しても、先に出ていくお金が返って来なくても大丈夫、商売しないという感じですかね。だから1億かけて2億返ってくるかも知れないみたいなものは乗らない。
2億入って来なくて困るのが自分だけだったら別にいいと思うんです。極端な話、自己破産すれば死ぬことはありません。
しかし、実際そうなったら社員やバイトをはじめとするスタッフの人たちも路頭に迷わすことになるので、それはよくないかなという風には思っています。
だから詐欺を見抜けなくても、失敗しても誰かに迷惑かけないようにはしようと意識はしています。
とにかく苦しい時は正しい判断がまず自分でできないと思ってください。大体誰もが判断ミスをするので、信頼できる誰かの紹介とか、そういうのが一番いいと思うんですけど、いい相談相手を見つけることですよね。
自分だけだとほぼ間違いなくミスすると言い切れます。なんか本当に、すごくいいアイデアを思いついたとか、神の言葉のように降ってくるんですよ。
後から考えたらあり得ないなと思うんですけど、本当にその時は判断が効かないので、その時に誰か、アドバイスというわけじゃないですけど相談できる方というのがいるといいですよね。
あとは自分自身の意識と考え方を変えることが重要です。やっぱり自分自身の経営者の意識とか甘さから今の会社の状況というのは全部きているんです。
大企業だとまた違うかも知れないですけど、少なくとも10人未満の零細企業や、自分の意識でそういうふうになっちゃったんだなという感じで自己責任として捉えられるかというのも大事です。
数字が見えないことが一番怖い
そして会社がかなり末期的な症状になっているという場合に関しては、事業再生的な人とかに相談することをおすすめします。とにかく自分もそうだったんですけど「見えない」というのが一番怖いんですよね。
見えると意外とそんなものかと分かったりするし、立て直しが利くんですけど、何もかも見えないというのが一番怖い状況なので、まず見える状況に持って行かなきゃいけないかなと思います。
自分だけでもがいていても、今見えていなかったからその状況になってるわけで、他の人から客観的な目で見てもらって、数字とかを出してもらうというのが重要かなっていう感じです。
数字が見えたら、それさえすれば何とかなるというゴールが見えるので、走ることが出来ます。何も見えない状態で目の前の延命措置のための小金稼ぎに走り出したら、なかなか助かるのは難しいという気はします。
まず、だから1000万だったら1000万稼がなきゃいけない、売上を上げなきゃいけないとなったら、その1000万を上げるためにどうすればいいのかという、そのゴールから逆算式じゃないときついのかなという気はします。
そういうのが分かるとやるべきことが見えてくると思うので、見えたらとにかくやるだけとなってきます。業界自体が完全に沈んでいってる業界とかもいっぱいあるので、やれば必ず助かるとか必ず事業がうまくいくとかもちろん言えないんですけどね。
そういう形で、業界を始めとする今の環境によっても差はあります。明らかに需要がないんだからその仕事自体を辞めるしかないといった辛い事実を、相談相手から突きつけられることもあります。
そうでなくて、まだ何かあるのであれば、新しい道を探すのもありかなっていう感じですね。
あとは会社を潰すというのも1つの選択肢かなと思います。
会社を潰す=悪と思っていたんですけど、さっきも言ったように、本当にもうどうしようもない、業界的にどうしようもないということとかもあります。
今で言ったら例えばポケベルの販売とか、どうしようもないじゃないですか、不可能じゃないですか。
携帯電話がこれだけ普及した中で、ポケベルとかはもうやっぱり潰れるしかなかったわけで、今はポケベルの会社なんてないわけで、そういうのはどうしても潰さざるを得ない。
あがいて借金しようとしても無理という場合はありますよね。うちに関しても、SEOという部分に関しては、前は請負で結構やっていたんですけど、今は検索エンジンの変動とかで、事業としてはもう撤退しましたからね。
まあ撤退というのも1つの判断かなと、何を切り捨てるかとか、とても大事かなと思いますね。こだわりを捨てることですかね。
とにかくまず、見える状況にして、その見える状況を誰かに見てもらって判断してもらって、あとは虚勢を張らずにその人の言うとおり、色々進んでいったら道は開けるんじゃないかと思います。